急がば廻れ 矢橋(やばせ)

〜京滋こんなとこ〜

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<近江八景  矢橋帰帆 瀬田の夕照(歌川広重画)>
滋賀県草津市に「矢橋(やばせ)」というところがあります。

室町時代の連歌師 柴屋軒宗長(さいおくけんそうちょう)さんが詠んだうたがあります。

「もののふの 矢橋(やばせ)の船は速けれど 急がば回れ 瀬田の長橋」


「もののふ」とは武士。
「矢橋の船」とは草津宿と大津宿の間にある琵琶湖の渡し。
矢橋港と石場港の間を結んでいました。

琵琶湖を渡るには、ほかに勢多(瀬田)に架かる橋を渡るルートがあります。しかし、この瀬田の橋は琵琶湖の最南端にあり、京と東国方面を行き来するには大きく南へ迂回することになります。そこで、手っ取り早く行き来する方法として、琵琶湖を船で渡る「矢橋の渡し」がありました。

今でもそうですが、晩秋から冬にかけて比叡山の方向から琵琶湖に向かって、非常に強い季節風が吹きおろします。

昔の小さな帆掛け船や手漕ぎ船では、こんな風が吹けばすぐに転覆してしまい、非常に危険であったことが容易に想像されます。また、風が強く吹いている日は、欠航なんてことも数多くあったはずです。
そこで、多少時間のがかかっても、危険な目に合うリスクを負ったり欠航で足止めを食らうことがない、確実なほうを選んだほうがいいですよというとことから、この地から、この言葉が生まれたそうです。

急がば回れ02
<近江八景  矢橋帰帆 瀬田の夕照(歌川広重画)>